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手話

手話

手話とは文字どおり「手で表すことばで、目で見ることば」です。聞こえる人が、小さいときから親や周りの人から様々なことばを「耳」で覚えて育ったのと同じように、ろうあ者も小さいときから「目」で様々なことばを覚えて育ちます。そういう意味で手話はろうあ者にとっての母国語でもあると言えます。音声言語も手話も言語として同じ働きをします。言語は日常の暮らしのなかで自由に使いこなせなければ意味がありません。その点で手話は立派な言語として使われています。

手話と顔の表情

手話と顔の表情はとても大切です。音声言語で軽い調子で「ウソ?」といえば、「それ冗談でしょ」というような軽い意味になりますが、相手に向けて怒りをこめて「嘘!」といえば「嘘を言って人をだましたな!」というような強い意味になります。話し言葉では声の高さや調子を使いますが、手話では顔の表情や身振りを使います。「目をみひらく」とか「眉をひそめる」という慣用的な言い方がありますが、これは驚いたとき、嫌なことを見たときの表情を表しています。「驚く」の手話に「目をみひらく」、「嫌い」の手話に「眉をひそめる」など、表情をつけると表現が豊かになります。

手話と日本語の意味のずれ

日本語の意味と手話の意味とは必ずしもぴったりとは一致しませんので、手話の形につけられている日本語は意味ではなくて「日本語のラベルだ」と言われています。手話の意味が日本語とずれていることから、手話は音声言語に比べて劣った言語だという考えもあるようですが、それは間違いです。例えば「稲」と「米」は本来同じものですが、日本語では植物として見たときは「稲」、食物として見たときは「米」といいます。英語ではどちらも「rice」です。日本語では「牛」「牛肉」なのに、英語では動物として見たときは「cow」、食用として見たときは「beef」と言い分けます。これは日本人が米を主食としている一方、英米人の生活には肉が密着しているからです。このように英語と日本語では同じものに対しても、意味の区切り方に違いがある場合があります。これは文化の違いによるものです。同様に手話と日本語も意味の区切り方が違う場合がありますが,それは,この世界を音声言語を通して見るか、手話という視覚言語を通して見るかという文化の違いに過ぎません。ひとつの手話の形に、たくさんの日本語の意味がつけられている場合があります。

手話の広がり

現在、手話は色々と広がっています。

手話サークル
手話サークルは手話活動を通じてろうあ者と健聴者が一緒になって社会の出来事や諸問題を学び、お互いの人格を磨き合っていく集団です。若い人もいれば主婦もいる、熟年の人たちも学生も色々な人たちが参加して様々な活動を取り組む中で、このような学び合いの集団が出来上がっているものです。各地に手話サークルが誕生し、活動が進むことによって、これまで地域や職場で孤立しがちだったろうあ者の暮らしにいろいろな変化がでてきました。近所の手話サークルの人と一緒に買い物したり、遊びにいったりするろうあ者が増えていますし、学校のPTAの会合に一緒に出かけたり、町内会の行事に参加する者も出てきました。このように手話サークルは、ろうあ者の社会生活にとって大きな明かり窓となっていることは確かです。
手話講習会
手話講習会は聴覚障害者への理解を広める、聞こえの保障のための手話通訳者を育てるという公共の目的があるので、県や市町村の主催で開催されるようにと聴覚障害者と手話関係者が運動してきました。そして昭和45年に社会参加促進事業の一環として手話奉仕員養成事業が国の制度としてスタートして、急速に各地に手話講習会が開催されるようになりました。手話講習会は手話の実技はもちろん、地域の聴覚障害者の生活や願いを聴覚障害者自身から学ぶ場となっています。講習会修了者によって地域の手話サークルが作られたり、その後手話活動を続ける人の中から手話通訳者が生まれるなど、聞こえる人が手話に関わる際の入り口の大切な役割を果たしています。
手話と京都聾唖院
明治11年、京都市では京都聾唖院が創立され、ろうあ教育が始まりました。明治以前には1人1人がばらばらにくらしていかなければならなかったろうあ者にとって、ようやく集団として学び合う場が出来たのです。従来、全く顧られなかったろう児教育の可能性を追求していったことや、ろうあ者同士の集団を作り出したことの意義はたいへん大きなものがありました。手話はこの集団の発展の中で、設立していったのです。盲唖院での学校教育は手話成立の基礎を確かなものとしましたが、実際に現在使われている手話は何といってもろうあ者集団が作りあげてきたものです。その集団はろう生徒自治会活動に始まり、やがて同窓会やろうあ団体の活動となって展開してきました。ろう教育は時代の変遷の中にあっても、手話は絶えることなく先輩から後輩のろうあ者に引き継がれ、ろうあ者団体の展開をともにしながら今に至っています。そして現在、ろうあ者の社会関係が拡大していくとともに、手話もまた発展しています。
 

手話通訳

手話通訳とは、聴覚障害者の聞こえの保障のために、耳の聞こえる人の話言葉を、耳の聞こえない人たちに理解しやすいように手話に置き換えて伝えます(聞き取り通訳)。また、耳の聞こえない人たちが表す手話の意味・内容を正しく読み取って、話し言葉に置き換えて耳の聞こえる人たちに伝える(読み取り通訳)と共に、耳の聞こえない人たちが平等に会議や渉外活動に参加したり、情報を取得するための援助をすることです。従って手話通訳者には手話の通訳技術と併せて、聴覚障害者の生活・歴史・受けた教育・社会的立場などの知識や理解が必要とされます。

手話の語源

手話は文字通り「手で表すことばであり、目でみることば」です。手の形や位置動きの方向や大きさ・顔や身体全体の表情などで、意味を表現しています。

(1)形や動作をイメージして表します。
手話で『テニス』はラケットを持ってボールを打つというしぐさを、『本』は両手で「本を開く形」を作って表します。このように、形や動作をイメージで表されるのが手話の特徴の一つです。
(2)文字の形をまねて表す手話
『田』 『井』 『川』 『中』 『月』などのように、漢字の形を手や指で作って表すものがあります。
(3)動作の方向や位置は意味があります。
『お金』は親指と人差指で輪を作って表現します。その形のまま上にあげると『高い』、下にさげると『安い』などと動作の方向や位置で意味がかわります。顔の前と後ろで時の経過を表します。例えば人差指を顔の後ろに動かせば『昨日』、前に動かせば『明日』になります。顔の後方は過去を、前方は未来を表します。『行く』『来る』『会う』は人差指を『人』に見立てて、指の動く向きで表現します。
(4)顔や身体の表情は大切です。
手話では、顔の表情や視線が大切な意味を持ちます。例えば『本当』と手話で表した場合でも、まゆをしかめての『本当』は“大丈夫なのかな”と疑うような意味を、目を見張っての『本当』は“信じられない”とびっくりしているような意味が含まれています。このように、手話は必ずしも日本語と一致するとは限りません。日本語のように音声により表現される「音声言語」と違い、形として表現される「視覚的言語」なのです。
 

「日本語対応手話」について

現在の日本のろう学校ではあまり手話が使われていないことをみなさんはご存じでしょうか。聾教育では口話主義と言って「ろう児に口話を教えるためには手話は使わない方がよい」という考え方が強く残っています。口話とは耳の聞こえない人が普通の耳の聞こえる人と同じように声を出して話し、また相手が話しているときの唇などの動きを見て相手の話を理解することです。ろう者が健聴者の社会に入っていくためには口話はとても大切なことですが、「口話を教えるためには手話は使わない方がよい」という考えは誤りです。病気や事故などで成人になってから聞こえなくなった中途失聴者もたくさんいます。この人たちはことばを覚えるときに聞こえていたのですから、発音は普通の人たちと変わりません。しかし、読話(話しているときの相手の唇などの動きを見て話を理解すること)は学習・訓練しなければなりません。これは既に大人になっている人には大変な苦労です。いきなり読話を教えても難しいので、まず手話を教えるとその手話が手がかりになって読話の学習がスムーズにいくことがあります。

日本手話の特徴

日本語を音声でなく、手指で表そうとするものが日本語対応手話です。口話教育ではどうしても聾児に日本語を獲得させることが難しい、聞こえないのであるから手話という手段を使って日本語教育をしたらどうかという発想で、昭和45年から栃木県立聾学校で「同時法」として日本語に対応した手話を使った聾教育が始まりました。幼稚部から小学部3年までは指文字、小学部4年から日本語に対応した手話を導入していくという方法です。栃木県立聾学校では栃木県ろうあ協会と共同で『手指法辞典』を編纂して使っています。日本語対応手話の本としては、より語彙数を充実させた『新・手話辞典』(手話コミュニケーション 研究会中央法規 1992年1月25日)が出ています。

  • (1)手話が三次元の空間に構成される言語であることを最大限に利用して,語と語の位置関係や手話の語の動きの方向などで,文法関係を表す。もちろん音声言語と同じように語と語の時間的な前後関係も文法関係の表示に利用する。語順は日本語と一致しなくてもよい。
  • (2)写像性を利用して作られている手話単語を多用する。日本手話の語彙と日本語の語彙とは一対一に対応しないことが多くなる。
  • (3)口話との併用を前提としていない。

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